今回は、ゲストポストさせていただきます。Ms. Nakayoshiの双子であるTが書いてくれた文章です。四年前一緒に散歩したりしていた話からこのポストが生まれました。のんびり生活をテーマにしているこのブログの際に、振り返ってくれたTが私と同じ身長の女性であります。そして、同じように寝ることも、ポーランド料理も、が大好きです。
それでは、以下はゲストポスト。

T.
世界で一番、素敵な場所はどこだろう。そう聞かれると、頭に浮かぶひとつの街が、学生時代に1年間留学していたニューヨークだった。美術館には古代から現代まであらゆる巨匠の作品が揃い、街にはギャラリーがいっぱい。高層ビルのすぐ隣には、公園が広がり、みんながピクニックをしたりデートをしたり、思い思いに過ごしている−−。
そう答えると「東京」も似たようなものでは?と聞かれることもあった。確かにその通りだが、ニューヨークのほうがもっとエリアの配置が絶妙でバランスがいい。「お弁当のように、具がぎゅっときれいに」に詰まっている、「キラキラ版の東京」と言えばいいのだろうか。
心のなかでどんどん美しく大きく膨らむニューヨーク。仕事が忙しくしばらくは遠い街となっていたが、Ms. Nakayoshiと一緒にクリスマスを過ごすために、久しぶりに観光に訪れることになった。

フライト前は、ここに行きたい、あそこに行きたい、と、遠足前の小学生のようにワクワクと行き先をリストアップしていたが、到着するとひどい時差ボケになった。
地下鉄やバスなどの移動中は、ほとんど眠って過ごし、Ms. Nakayoshiにすべてを委ねていたため、1週間ほど滞在していたはずなのに、記憶がひどく曖昧だ(私が迷子になって凍死しなかったのは、Ms. Nakayoshiの優しさのおかげだと思っている。)。
うとうと、メトロポリタン美術館、うとうと、ミュージカル、うとうと、タコス、うとうと、5番街の散歩、うとうと、ベーグル、うとうと、シャワー、うとうと、地下鉄。すべての思い出と思い出の間が、うとうとで繋がっている。キラキラと輝くニューヨークが、すっかりと眠気でラッピングされてしまったのだ。
結局、心に描いていた「素敵なおべんとう」のようなニューヨークを実感することはなかったが、それでもニューヨークでのひとときは素晴らしいものだった。

現地で、私が唯一意識をしっかりと取り戻していたのは、家でMs. Nakayoshiとのんびり紅茶を飲んでケーキ、近所で買ってきたクリームたっぷりのベーグルを食べている時だけだった。
その時、私たちはニューヨークについて語るわけではなく、恋愛の話やそれぞれの仕事、将来のはなしなど、いつもどおりの話をしていた。
「人生ってむずかしいね、でも楽しいね」「ケーキおいしいね、でも食べたら太っちゃう」「宝くじがあたったら、海の近くに引っ越そう」などの、過去に何百回も話してきた話題を、飽きもせずに繰り返していた。
それが、最高にキラキラと輝いていて、楽しかったのだ。

思えば、私の中でニューヨークがひときわ輝いていたのも、当時の友達から、一度だけすれ違った人含め、無数の人と交わしたコミュニケーションの思い出が、キラキラの粒になって街をデコレーションしていたからだろう。Ms. Nakayoshiとの思い出も、今はひときわ大きなキラキラになって街をライトアップしている。
そう考えると、「世界で一番、素敵な場所」、キラキラしている街、は世界中に広がっていく。あの街、この街、あの小さな部屋、小さなカフェ、今はもうないあの家。これからも、そんな場所をたくさん見つけて、心の中に素敵な場所マップを作りながら、生きていくとおもうと、ちょっとワクワクする。